対談:ソーヤー海✕藤田一照①|呼吸につながって到着する。マインドフルネスの体現者であるソーヤー海氏が影響を受けた人物と、彼の人生とは?
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2017/08/25 07:20

対談:ソーヤー海✕藤田一照①|呼吸につながって到着する。マインドフルネスの体現者であるソーヤー海氏が影響を受けた人物と、彼の人生とは?

ギフトエコノミー(与え合いの生態系)で成り立つ「東京アーバンパーマカルチャー」を主宰するソーヤー海さん。活動テーマの一つに、「マインドフルネス」を置いています。マインドフルネスの体現者でもある海さんに、磨塼寺(ませんじ)を主宰する藤田一照が、これまでの経緯や現在の活動についてお話しを聞きました。

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(インタビュー開始時、お茶を飲もうとする海さん。召し上がる前に目をつむって手を合わせ、なかなか目を開けません...)



スタッフ お祈りですか?

ソーヤー海(以下、海) 到着。呼吸につながって到着する。

藤田一照(以下、一照) 今やってたのって、心の中で何か唱えてるの?

海 そうだね、二つのことをやっていて、一つは感謝。やっぱり、生きてるって奇跡だから。「今、生きてる!」っていうのを感じる。大抵ご飯を食べる前にこれをやっていて。ご飯があることに感謝とか、ここにいる縁の仲間の人たちとか、作ってくれた人とか、色々一通り感謝をいったり、ちょっと上手くいっていない人にも感謝をいってみたり。というのと、そのあとに呼吸を調えて、調えるというか、今の体と心の状態をチェックして、本当にちゃんとここにいるかどうかを確かめられてから食べる、飲む。

一照 定型の祈りの言葉みたいに、長さは別に決まっていないわけですよね。その時その時の感じで……。

 決まってはないけど、一般の人に聞けば長いってみんな言う(笑)

一照 早く食べたいからね、みんなね。

 そうそう、いただきますがよーいどんみたいになっているから、今の時代って。でも僕は到着する練習を入れられるだけ入れたい。それはティク・ナット・ハン(※1)の影響が大きくて。

一照 到着する。I have arrivedですね。

 彼のお寺で、鐘が鳴ってみんなやってる作業をやめて止まって呼吸に戻るのと一緒で、食べ物を食べる前も「マインドフルネスベル」みたいな感じで、本当に自分がここにいてこの瞬間の奇跡に繋がれているかどうかを確かめてから、次の行動に入る。一つのやりやすい実践として。

一照 三食毎回?何か口に入れる時にやるの?

 だいたい一日三食はそれをしていて、その他はフリースタイルで(笑)やるときもあればやらない時もあるけど、やらないと終わってから気づく。「あ、美味しかったんだっけ?」みたいな。意識がここにないとあっという間に今が流れっていってしまう、という体感を何回もしているから。本当にここにいればすっごく美味しく感じるけど、意識がどっかに飛んでたらいくら美味しくてもわからない。

一照 美味しさっていうのは客観的にあるわけじゃないからね。時間も客観的にあるわけではなくて、それを自分がどう活かしていくかで全然意味や味わいが違ってくるからね。

 そうそう。あとは、呼吸をするのがティク・ナット・ハンと出会ってからものすごく好きになって。

一照 呼吸をするのが好きっていうのはすごいね(笑)

 そう、呼吸って生きていることのevidence(証拠)じゃん。今呼吸をしているのは生きてるってことだから。それに気づけるだけでもう超ハッピーになるし。

一照 アタマの中の主観的な観念というよりは、からだでリアルに幸せを感じることができる。

 息が入っていく瞬間に、「幸せ〜」みたいな感じで広がっていく。コスタリカのジャングルで暮らしてたり、生態系と意識的に関わり始めてから、酸素ってプランクトンと森がただで供給してくれて、それを俺は吸いたいだけ吸えるみたいなさ。で、何も見返りを求められていないから、吸っても別に恩着せがましく感じないし。でも、生かされてる。彼らの当たり前の役割に自分が生かされてるから、「うおー、ラッキー!」みたいなさ。だからそうやって意識がそこに向くだけでどんどん、どんどん幸せになって。

一照 そういうのは「知ること」と「感じること」が一つになってるよね、別々じゃなくて。ありがたいとか、感謝する気持ちとか、喜びとか、そういうのが「知ること」から自然に湧いてくる。だから「知」と「情」っていうのが分かれていないよね。僕らはそれを別々なことのように思っているけど。「知」と「情」っていう元々一つのものを一つに感じられる、自然の在り方をしてるなって、今聞いていて思いましたね。

 そうだね。バラバラになってしまった要素をいかに統合していくかってうのが最近自分のテーマ。自然があって人間がいるんじゃなくて、俺は生態系の一員で、役割を果たしているだけ。

一照 共存しているからね。ところで、どういう経路でここまで来ているのかを聞いてみたいところではある。

 難しいよねそれって。それも、結局どこで区切るかっていう話。

一照 この質問をしたらそう言われると思いました(笑)けどしょうがないね。


 僕は東京生まれの新潟・ホノルル・大阪育ち。大学に行く前はただのサッカー少年。ちょっと不良にも興味があるし、エッジに住んでいる人たち、自由に暮らしてるなんかワルっていうのにすごく関心があった。

一照 そういうのは身近に、想像じゃなくて、実物としていたわけですか?

 例えばタバコ吸う仲間がいて、僕もそのときタバコ吸ってて、でサッカーやって、で成績もいいみたいなさ。全部のグループに関わりたいっていうのがあって(笑)で、どこかにすごい不満とか怒りがあって、なぜかというと家族の問題であったり、自分に自信がなかったり、あとはやっぱりハーフで日本に生まれ育って見た目がこうだから、日本人になれないんだよね、絶対に。フル日本人として受け止めてもらえることが絶対にないから、ハーフっていうと「ああー。」って言われるんだけど、それを言わないと外人さんなんだよね。それが結構若いときは苦しくて、帰属するってことはすごく、どんな人間でも大事なニーズだから、それがなくてイライラし始めて、それがだんだん暴力的になっていって。で、極端な発想になって、アメリカのメディアの影響もあると思うんだけど、米軍に入ろうと思ったの。米軍に入ればなんか認めてもらえるし、帰属もできるし、かっこいいし、かわいい女性にももてるし、みたいな調子で。


一照 具体的にはどういうこと?日本にいながら?

 日本の高校のときは、アメリカの大学に行って米軍に入ろうと思ったの。中高時代、買う本は全部軍事兵器のマニュアルとかばっかり買ってて、ゲームも戦闘国家っていう戦争のゲームをやってて。とりあえず戦争大好きみたいな感じだったのね、一部では。でももう一部では、平和っていうのは当たり前のことで、戦争行くのはダメだよねっていうすごい変な矛盾があって。そこから大学に行った時に大転機の時期があって。たまたま行った大学がヒッピーと社会運動家がすごいいるUC Santa Cruz(カリフォルニア大学サンタクルス校)。ヒッピーが多くて、同じ系列のUCバークレーより多分もっとオルタナティブ。ちょうど大学に入る数日前に、新学生のためのキャンプに10日間行ってて。これから大学行くぞみたいな、それが2001年。その時に9・11が起きて。


一照 その年なのか。

 9・11が俺の入学式だったの、シンボル的には。自分が住んでる国がこれから戦争に行くっていうのを、初めて戦争のリアリティーを感じて。プロパガンダもすごかった。ニュースでひたすら、こいつらを殺す、みたいなさ。

一照 そうだね。僕も当時は東海岸のマサチューセッツ州の西のはずれの田舎町の林の中の禅堂にいたんですけど、テレビがなかったから、日本からの電話で「テレビ見なさい」っていうから、「いやないんです」って。「じゃあラジオ!」ってラジオつけたら、すごいこと言ってて。翌日友達がビデオ録ったやつを見てびっくりしたけどね。こんなこと起こるのかと。

 ちょっとどうしたらいいか、わけがわからないという感じ。

一照 あれから本当空気ガラッと変わったね。リベラルなマサチューセッツですら。

 それがあって、いままでの自分が作り上げてた妄想の世界が崩れたんだよね。世界は平和で、戦争なんか第二次世界大戦以降終わっていて、みんな中流階級で、買い物したかったら買えるし、仕事ほしかったら仕事がもらえる、みたいなさ。でもそれが全部崩れて、いろんな不条理や不和がどんどん目に入ってきて、やばい!みたいな感じになって焦り始めて。反戦運動とかやったり、有機農業やったり、持続可能な社会を作るための授業を学生とともに立ちあげたり、毎日活動してた。

一照 ブッダが城壁の門のところで、病気の人や老人や死んだ人を見て、人生の見方がガラッと変わっちゃった、みたいなことを思い出すよね。

 現実が崩壊したから、ある意味自分で新しい現実を作り上げないといけないような状況に、ラッキーながら学生の時にそれがあって。


一照 落ち込むというよりは、それまでよりももっと積極的に立ち上がったみたいな感じに今聞こえたけど。

海 周りが立ち上がったから。学生は授業でただ椅子に座って先生の言うことを聞くはずの身なのに、数百人がある時間になったらみんなゾロゾロっと立ちあがって授業から出て行って、大学を閉鎖して。もうワクワク、ゾワゾワしたんだよね。これはすごいことが起きている。俺はその一員になりたいっていう。


一照 惹かれたワルの人たちって、一つの自己表現なんだろうね。その人たちの反対の行動、暴力とかは自覚的だった?それとも、周りに流されてって感じだった?

海 それはミックスだったね。反戦運動をしている仲間でも、結構暴力的な言葉を活用していたり、体制をつぶして血を流せ、みたいなさ。そこには全然賛同できない、けど仲間だから、同じ反戦をやっているから。どう捉えていいのか、この違和感はなんなんだろうっていうのを考え始めて。戦争と平和がリアルになってきたっていうのと、もう一つが、ものすごい活動ばっかりしてて生活ができなくなっちゃったんだよね。畑もぐちゃぐちゃ、パートナーともケンカしたり、なんか彼女が話していても、頭の中でメール書いているの、次のミーティングの。だから全然話が聞こえないの。顔はそっち向いて頷いているんだけど、頭の中ではどんどん、どんどん自動的にメールを書いて、アジェンダ作って、で起きたら、パソコンまず最初に点ける。寝るときはパソコンを閉めてやっと寝るみたいなさ。本当になんかちょっと狂った人みたいになっちゃって。ガンディーが言った「my life is my message」っていう言葉があって、「僕の生き様が僕のメッセージだ」って意味。大学で持続可能な社会とか平和についてよく語ったり、教えてたりしたんだけど、自分の生活は全然メッセージになってないなていうのが明確。体もヒョロヒョロになって、いつもパソコンにくっついて、忙しくて、なんかあんまり幸せじゃないし、友達も減っちゃって。


一照 それって大学生の時のことなの?


 大学と大学卒業してから2年、ずっと大学で活動を続けて講師みたいな感じで教えていて。根本的に何かがずれてるんだけど、それがわからなかったの、なんなのか。僕は心理学専攻だったんだけど、その時に心理学の先生に、ティク・ナット・ハンっていう人がいるよって言われて。別に瞑想とか禅とか、あまり興味がなかったんだけど。西海岸にいたからこそ、それちょっとヒップだよね、みたいなそういうノリで。「People of color retreat」っていって、直訳すると、「有色人種(マイノリティ)のためのリトリート」。マイノリティのためのリトリートを、ティク・ナット・ハンっていう禅の先生が行うっていうチラシをもらって、ちょっとマイノリティの集まりに参加することにも興味があった。「あ、俺、有色人種の特別扱いされるチャンスだ」みたいな。日本のハーフだからっていうのと、ちょっと行き詰っていたから。忙しくて、本当美しい思いを持っているのに、美しく生きていないっていう。それでリトリートにいって。一番感動したのは、ティク・ナット・ハンが...

一照 それ生のティク・ナット・ハンさんに会ったってこと?

海 そうそう。

一照 よかったね、それは。かれの存在感て圧倒的だからね。


 2006年か2007年頃。彼が法話の時に、300人ぐらいの前でステージに上がるところを覚えてるんだけど、めっちゃゆっくり歩いているの。僕もよく学校でステージとかで話してたからさ。どっちかというとTEDトークみたいな、バーンって出てきて、ヘイ!て感じで14分で盛り上げて出る、みたいなさ。ハイインパクト、ショートタイムのような。でもティク・ナット・ハンは延々と歩いていて。それがなんか不思議で。静かにみんな見ているから、なんなのその光景は(笑)さっさと歩けよ、みたいなさ(笑)。と思っている部分と、存在感がちょっと普通の人とは比べ物にならない。それをみんな普通にただ見ている。焦りもイライラも感じずに、彼の一歩一歩到着する姿にただ見惚れているというか。本当にしっかり到着していて。

一照 そうだよ、そうなんだよ(笑)僕も同じ感動を受けましたね。

海 やっとみんなの前に立って、坐布の上に座る時に、もう座るスピードもめっちゃ遅くて、「うおー、なんかスローモーションを見ている!」ていう感じで、なんか徹底してるなこの人!っていうのと、やっと座ってなんか喋るのかと思ったら、今度魔法瓶とって、お茶汲みはじめて、「ええ!?マジで?」って(笑)なんかすっごい美味しそうにお茶を見ている。なんでうちらはこんなお茶を飲んでるおじさんを見ていないとダメなんだ、って(笑)


一照 スローモーションのパフォーマンスやってるんじゃないかって(笑)

海 でも全く周りに動揺してない。完全にマイペースで、平和で。やっていることに忠実っていうところにものすごい、「これかも、俺がないのは」って思って。彼の本に「Being Peace」っていうのがあるんだけど。

一照 僕もアメリカで最初に読んだ英語の本はそれでした。


 Doing Peaceはすっごいやってきてたんだけど、その限界を感じていたし、全然それで平和が広がる感じがしなかった。表面でいくら頑張っても、ほんとに効率が悪い。彼はもういるだけで平和になる。それめっちゃ効率いいじゃん。それに感動して、そこからマインドフルネスとか禅とか瞑想に関心が出て、今に至る。

一照 「Take every step mindfully」っていうのをやっているんだよね。やっているというか、たぶん本人には特別なことをやってる気なんてないんだろうね、当たり前にそうなんだろうね。



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大学生の時にティク・ナット・ハン氏の法話を初めて聞いて、大きく感動したソーヤー海さん。次回は、そんな海さんの現在の活動や在り方について、より詳しくお伺いします。

つづき…『対談:ソーヤー海✕藤田一照②|ウツになっても最高!修行できるって最高!動詞としてのマインドフルネス、実践し続けることに意味がある


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※1ティク・ナット・ハン…キング牧師の推薦によりノーベル平和賞候補にもなったベトナム出身の僧侶。史上最も名を知られた禅師の一人であり、西洋社会にマインドフルネスを紹介したことで広く知られている。同時に、人権運動家、詩人、作家でもあり、その著作は世界中で出版され、累計数百万部に及ぶ。弟子たちからは親愛をこめて「タイ(ベトナム語で先生の意)」と呼ばれている。


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ソーヤー 海
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