【坐禅講義73】第四講:坐骨で坐る
藤田 一照 藤田 一照
2018/07/27 07:03

【坐禅講義73】第四講:坐骨で坐る

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【坐禅講義72】第四講:云為の坐禅へ

 

この写真1の赤ちゃんは、骨盤でしっかりと床を捉えていて、その骨盤に支えられて 腰椎(五個)-胸椎(十二個)-頸椎(七個)-頭部が一つらなりに繫がって伸びやかに上に向かって立ち上がっています。

骨盤と床の接点になっているのは左右の坐骨です。

坐位においてはこの坐骨の上にどのように体重が落ちているかが最も重要なポイントになります。

それが骨盤全体の傾き具合を決め、その上にのっかっている上体の形状やからだ全体のバランスに大きな影響を及ぼすからです。

坐骨でうまく体重を支えることができると骨格全体のバランスで坐ることができます。

写真2はわたしが坐禅の説明のときいつも使う全身の骨格模型が支えなしでバランスだけで坐っているところです。

この骨格模型を坐らせるときには後ろから肩の辺りを両手でもって体幹を前後 左右にゆっくり動かしながらバランスの取れる場所を手で感じながら探していきます。

生卵を立てるときと同じ要領です。

それと同じことを自分の身体感覚を手掛かりに行なうのです。

わたしは「左右の坐骨のところに生卵をイメージしてその二個の生卵を立てるように」あるいは「自分が大きな一つの生卵だと思ってそれをバランスで立てるように」などと説明することがあります。



坐禅では坐骨の下に坐蒲という丸いクッションを敷きます。

先ほども言ったように、厚すぎず、薄すぎず、ちょうどよい厚さの坐蒲の上に坐骨を正しく乗せ、結跏 趺坐、半跏趺坐あるいは安楽坐のような坐法で坐れば(股関節、膝、足首が十分にほぐれ柔軟である必要がありますが)、両膝の外側が無理なく坐布団にしっかりとつきます。

左右の坐骨上の点を結ぶ線と肛門と生殖器を結ぶ線の交点と頭頂を結ぶ上下の線がからだの中心軸(体軸)で、これが鉛直線に沿って上にも下にものびのびと伸展していくように無理なく坐ることが正身端坐の最大の要点です。



そのためには丸いかたちになっている坐骨のちょうどいい位置に体重がまっすぐ鉛直に落ちるようにしなければなりません。

そうするとからだに内蔵されている自動調整メカニズムが働いて上体が自然に上に向かって伸び上がっていきます。

もちろんその自然な働きの発現を邪魔しないように、股関節、骨盤、脊椎、首、肩周辺の筋肉は極力ほぐれ、リラックスしていなければなりません。坐禅で深いリラクセーション、からだのほぐれが大切である所以です。



坐骨の丸みをうまく使って骨盤を前や後にゆっくり転がし、まっすぐ体重が落ちるような骨盤の傾きをていねいに探します。

生卵をバランスで立てようとするときの感じに似ていますから、その感じを覚えるためにも是非みなさんも「生卵立て」を試してみてください。

この骨盤の前後の転がしを行なうとき坐布団についている両ひざの支えがずいぶん助けになります。

その支えのおかげで胴体に余計な力を入れずに動くことができます。結(半)跏趺坐、あるいは安楽坐で股関節を十分に開き、両膝をしっかり坐布団につけるのは、骨盤が楽に転がれるようにするためもあるのではないかと思います。



からだが十分ゆるんでいれば、坐骨の後方すぎる位置に体重が落ちるときは骨盤が後ろに傾きすぎて、自然に腰や背中が丸まり、肋骨が下がり、下腹が圧迫され顎が 胸の方に近づいてきます(「へたれ腰」の状態)。また、腰と繫がりのあるまぶたが落ちてきて目が閉じられます。

逆に坐骨の前方すぎる位置に体重が落ちるときは骨 盤が前に傾きすぎて、自然に腰や背中が反り、肋骨が引き上げられ、下腹が前に突 き出て顎があがります(「反り腰」の状態)。

まぶたは上に上がってきて眼が見開かれます。

このような骨盤の傾きに伴って連動して出てくる腰や背中、肋骨、顎、 まぶたなどの部位の自然な形状の変化を拘束、束縛しないようにからだを極力ほぐれた状態しておくことが大切です。

そういう各部位の変化は自分で意図して「起こす」のではなく、からだの繫がりで自然に「起こる」のです。



骨盤を前にゆっくり倒していってそういう変化が自然に起こるかどうか、からだで繊細に感じてみてください。

次に骨盤をゆっくり後ろに倒し、さっきとは逆の動きが自ずと起こってくるかどうかを感じてください。

今度はそうやって丸まった腰が伸びていき、今まさに反り始めたなと感じるところまでまた骨盤をゆっくり前に起こしていきます。

そこから骨盤をゆっくり後ろに倒し、今まさに腰が丸み始めたなと感じるところまでもっていきます。

そこからまた骨盤をゆっくりわずかに前に起こし......このようにだんだん前後の動きを小さくしていき、背中や腰が丸まってしまうポイントと反ってしまうポイントのあいだのどこかにある、腰や背中が無 理なく伸び上がるポイントを身体の内部感覚を繊細にかつトータルに感じとるこ とで絞り込んでいって見つけるのです。

最適のポイントでは筋肉の緊張によってではなく、主に丈夫な骨格でからだの重さがバランスよく支えられますから筋肉の余計な 緊張は必要なくなります。

その結果、当人には努力して背中をまっすぐにしているという感じが起こらず、一番“ニュートラル(どちらにも片寄っていない)”な感じが して、重さがなくなったような気さえしてきます。

そこでは頑張って「腰をもっと 入れる」とかの余計なことをする必要はありません。

骨盤がその位置で立っているときには自ずと腰が入った状態になるからです。

強為で作る「入れた腰」ではなく云為でそうなった「入った腰」です。 

 藤田一照著「現代坐禅講義」(P.***~)より一部抜粋

  

《藤田一照 一口コメント》  

「意志の力で筋肉を張って無理に自分をまっすぐにしようとすると、内的感受性を遮断することになる。すると、真の垂直性は不自然なものにとって代わられ、やがて疲労によって緩んでしまう。制限や記憶なしに真の身体感覚、空間的身体に至ると、身体はひとりでに垂直性を帯びるだろう」(ビリー・ドイル著『カシミールの非二元ヨーガ』ナチュラルスピリット)。

『現代坐禅講義』を書いた時には、このビリー・ドイルの本はまだ存在していなかったが、同じような発想が自分の中にはあった。

自分の重さが坐骨に今、現にどう落ちているかという感覚を紐解くことで、自然な垂直性に至る可能性ということは、

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