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【坐禅講義70】第四講:坐禅の実際―からだほぐし②

 

最初の挨拶から動きの説明も含めてここまでの約一時間あまりの間は、坐蒲を使わ ないようにし坐布団の上にあぐらで坐って行います。

全身さすり→関節回し→自己手当て(時間が許せば呼吸法・発声法も)という流れでからだほぐし体操を終え、 そこで初めて坐蒲を坐骨の下に入れてもらいます。

最初から坐蒲を使うとその有り難味がわからないからです。

坐蒲の助けを借りることで坐骨の位置が無理なく膝よりも少し高くなります。

そのことで、腰(五個の腰椎の部分)の感覚がいっそうはっきりしてくる、膝が姿勢の安定によりいっそう貢献できるようになる、床が下から胴体を支えている感覚がより明瞭になる、骨盤に決まりがつくという感覚が鮮明になる――といった様々の功徳が生まれます。

わたしの坐禅会で使っている坐蒲はそば殻入りで普通に市販されている坐蒲よりもだいぶ大きな直径をしていますので、高さの調節が容易にできますし、お尻のかたちにぴたっとフィットします。

パンヤ入りの坐蒲に比べて重いので持ち運びには難がありますが、坐り心地ははるかに快適です。

 

坐蒲は坐禅をする者にとって欠かせないパートナーですので、是非自分にあった 「マイ・坐蒲」をお持ちになることをお勧めします。

坐蒲が厚すぎると骨盤が前に傾きすぎて腰が反り過ぎ、膝に体重がかかりすぎてしまいます。

逆に、坐蒲が薄すぎると骨盤が後ろに傾きすぎて、腰が丸まり、股関節に負担がかかりすぎることになります。

坐蒲の大小、高低、硬軟が不適当な坐蒲に坐り続けていると坐相も健康も損ねてしまいかねませんから、十分な配慮が必要です。

坐蒲なら何でもいいというような態度は感心しません。

坐り心地、坐りやすさ、下から確かに支えられているという支持感覚、呼吸の楽さ、などを自分の感覚を頼りに確かめ、一番適切な坐蒲を手元に置くようにするべきです。

わたしはそれも大事な坐禅修行の一環だと思っています。

もちろん坐禅の深まりに応じて最適な坐蒲の条件は変わってきますから、坐ったときの微妙な感じを指標にして随時坐蒲を更新していく必要があるでし ょう。

 

さて、こうして一時間あまりいろいろ動いたあとで初めて坐蒲に坐り、坐蒲の意味、有り難さを実感してもらったあと、問題なく脚を組める人には結跏趺坐か半跏趺坐のやり方で脚を組んでもらいます。

そのとき大略こういう説明をします。

「坐禅というとまずこういうふうに脚を組むところから指導が始まることが多いのですが、それだといきなり最初から難関にぶつかることになります。 

床に坐り慣れていないアメリカの人たちはなおさらですが、最近では日本でも椅子に坐ることの方が主流になってきていますから日本人でもたいていの人は、こういう伝統的な脚の組み方をすることはまず無理です。

『これが伝統のかたちなんだから何がなんでもこう坐らなければ駄目だ。

少々痛いくらいは我慢するべきだ。 

そのうち慣れればできるようになるんだから。 

それができない人は坐禅をやらなくていい』という結跏趺坐原理主義者のような人もいますが、わたしはそういうふうには思いません。

坐禅で一番大切なのは安定し充実した下半身の土台の上に上半身が深くリラックスした状態(いわゆる上虚下実)でまっすぐに立ち上がっていることだと理解していますから、無理をして脚を組むことで上半身が傾いたり緊張したりするようならそれこそ本末転倒です。

脚を組む痛みの方にばかり気をとられてしまい、のびのびとした坐禅ができないようでは困ります。 

何よりもまずわれわれのいのちの本である内臓が収納されている体幹が楽にまっすぐ立ち上がることを最優先にするべきで、木で言えば幹を枝である脚の犠牲にするのはおかしいと言わなければなりません。

もちろん結跏趺坐や半跏趺坐にしたときの確かな接地感、安定感はたとえようもないくらい素晴らしいものです。

結跏趺坐・半跏趺坐の姿勢が楽にできるようになるために古来から練り上げられてきた練習方法であるハタ・ヨーガなどを習ってその姿勢を身につけることを強くお勧めします。

しかし、楽に結跏趺坐が組めるようになるまでには相当長い時間がかかりますから、今の時点でそれができないのであればしかたがありません。

自分で最適な脚のおさめ方を見つけてください。

脚が組めない方にわたしが勧めているのはヨーガで安楽坐と呼ばれている、両足をからだの前に前後に重ねる坐り方です。

適正な坐蒲を使えばこの坐法でもかなりの安定感が得られるからです。 

 

 藤田一照著「現代坐禅講義」(P.391~)より一部抜粋

  

《藤田一照 一口コメント》  

坐蒲の重要性を指摘しておきながら、市販されている坐蒲でオススメするものがないことをとても残念に思っていました。

そうしたらやっとご縁ができて、僕がオススメできるソバ殻入りの素敵な坐蒲を作ってくれる人が