【坐禅講義51】第三講:呼吸と五感
藤田 一照 藤田 一照
2018/02/23 07:06

【坐禅講義51】第三講:呼吸と五感

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【坐禅講義50】第三講:内からの助け

実は、呼吸も姿勢を支えてくれています。

坐禅のとき、息が入ってくると、だんだん上に向かってほんのわずかの動きですが、明らかにからだが立ち上がっていきます。

入息に伴って骨盤全体が前に少し転がりその動きによってその上に繫がっている五個の腰椎、十二個の胸椎、七個の頸椎、そして一番上にある頭蓋骨が下から順番に上に向かってほんのわずか「ぶら上がって」いき、全体としては上体が上に伸び上がるような動きになります。

また背中には左右に広がる動きが生まれます。

息が出て行くとその逆に骨盤が元の位置に戻り、それに従って脊椎も下から順番に元の位置に戻っていきます。

背骨全体として見れば入息、出息に伴って外からは見えないほど小さい(しかし体感としてははっきり感じられる)上に伸び上がったり元に戻ったりというリズミカルな運動が起きています。

この呼吸が生み出す背骨の運動については次の講義で触れますが、この呼吸が生み出す自然で微細な動きが全身にわたってスムーズに起きているような坐り方ができているかどうかが正身端坐の一つの目安になります。

この背骨の運動の感覚を手がかりにすることでからだのどこにどのような緊張やこわばりがあるかをからだが認識します。

それに基づいて姿勢の自動的な調整運動が起こるのですから、呼吸に導かれていくことで姿勢が向上していくということになるのです。

息がからだのなかに入ってくると内圧があがってからだ全体が一個の風船のように膨らんでいきます。

息が出ていくときにはからだ全体の弾力によってもとのかたちに戻っていきます

この呼吸による膨張-収縮運動も姿勢を維持する大きな助けになっています。

というのは全くからだを動かすことなくじっと静止しているというのは本来非常に疲れることなのです。

ですから、こういう膨張-収縮運動は一種の呼吸による全身マッサージのようなものだと言えますし、呼吸によって微妙に揺さぶられながらバランスをとって坐ることでそれほど疲れずに姿勢を維持することができるのです。

呼吸は、外界から酸素を取り入れ、体内で消費して二酸化炭素を放出するという生命維持の働きだけでなく、こうして坐禅そのものを成り立たせる大きな助けになっているのです。




また、視覚や聴覚も坐禅を助けてくれます。

ものを見るとき、普段のように、もっと見ようとして眼を緊張させて使うと、見たものに引きずられるようにそちらの方にからだがのめっていきます。

何かの音を聞くときも、もっと聞こうとすると耳が緊張して、耳を傾けるという言葉がありますが、からだもそちらへ傾きます。

これは視覚や聴覚が姿勢を崩すように働くという例ですが、実はこれとは反対に、姿勢を支え整えてくれるように働く眼の使い方や耳の使い方があります。

もっと見よう、もっと聞こうと欲張らないで、余計な努力をする以前にもうすでに見えていること、聞こえていることに落ち着き、視野や聴野(こういう言葉はないかもしれませんが聞こえる範囲、聴力の及ぶ範囲という意味です)のなかのどれか特定のものに濃厚な関心を集中しないで、視野・聴野の中にある全てのものを均等に柔らかく受けとるのです。

さらに、その情報を受けとる場所ですが、肉体的な意味での眼や耳のある場所でではなく、視覚の場合なら後頭部上方にある脳の視覚野、聴覚の場合なら両耳の少し上あたりにある脳の聴覚野あたりで、何となく情報を受けとるような感じでいると、眼や耳そのものを緊張させずに見たり聞いたりできるようになります。

こういうやわらかい、焦点を特定の場所に結ばない、広域受信モードの眼は、前に言ったマジック・アイに他なりませんから、それと同じような質を持った耳は「マジック・イア」と呼べるでしょう。

こういうマジック・アイやマジック・イアで見たり、聞いたりするなら、その視覚や聴覚は姿勢の維持や全身のリラックス、意識の覚醒に大きな貢献をしてくれます。

もちろん、他の感覚、味覚や嗅覚、身体感覚についても同じことが言えます。

全ての感覚器官がマジック・アイ的な質を備えるならそこから入ってくるあらゆる情報が坐禅を維持し豊かにする助けになってくれるのです。

 

 藤田一照著「現代坐禅講義」より一部抜粋(P.243~P.24)より一部抜粋

 
《藤田一照 一口コメント》
自分でまっすぐになろうと力を使わなくても、呼吸に助けられて取直性に至ることができます。次のようなことを試してください。
 
1.楽な姿勢で坐る。
2.入息のとき、息が床から上がってきて、仙骨、背骨を通り、首、頭頂に達する動きを感覚する。
3.出息のとき、息が頭頂から上に向かって出ていき、天井に達するのを感覚する。
4.入息が自分を垂直性へと至らせ、出る息がさらにそれを上へと伸ばすのを感じる。

一息一息ごとに上記のワークを試みて、何が起こるかを虚心坦懐に観察してみてください。

少なくとも5分から10分くらいかけて、このような仕方で息をすることが垂直性にどのような影響を及ぼすかを感じ取ってください。

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