【対談】桜井肖典×藤田一照①|社会芸術家ークオリティーを変える芸術とは?
事務局 事務局
2017/11/18 07:00

【対談】桜井肖典×藤田一照①|社会芸術家ークオリティーを変える芸術とは?

「社会芸術家」として全国各地で活動をする桜井肖典さん。藤田一照氏が主催する「仏教塾」では、発起人の一人として、立ち上げ当初から携わっていらっしゃいます。「社会芸術家」という耳慣れないコンセプトですが、活動の背景には一照さんとの出会いが大きく影響しているとのこと。「芸術」や「禅」をテーマに、「社会芸術家」としてのお話しを伺いました。

——————————————————————




1. 同じことでも質が変わるー社会起業家

藤田 一照(以下、藤田)  桜井さんとは最初に会ったのは、現在、東工大のリベラルアーツセンターで教えている中野民夫さんに、『みんなの楽しい修行:より納得できる人生と社会のために(春秋社)』っていう本を出した時の出版記念に呼んでいただいて、その時に初めて会ったんだね。

桜井 肖典(以下、桜井) そうです。

一照 出版記念をオーガナイズするくらい、中野民夫さんとは親しかったわけですよね。

桜井 民夫さんが京都に引っ越されてから親しくなったんですけど、その後すぐですね。

一照 どういうプロセスで親しくなっていったんですか?

桜井 京都に「Impact Hub Kyoto」っていう、社会起業家とか社会変革者がコワークするような場所があります。ロンドンで始まったんですけど、それが今世界60都市以上に広まっています。その立ち上げのメンバーとして出会いました。

一照 文化的な運動なんですか?

桜井 Impact Hubっていうコミュニティが各地にあるっていう感じですね。

一照 それは世界連盟みたいなのがあって?

桜井 2005年に、自発的にロンドンで立ち上がったのを各都市の人たちが見て。社会変革者とか社会起業家というのは新しいジャンルを創る人なので。

一照 最近、僕もよく聞く言葉なんですよ、社会起業家とか社会変革家というのはどんなことをめざしている人たちなの?

桜井 変革家ではなくて社会変革者と言ってます。

一照 かれらはどんなことをやろうとしているんですか?それは仕事?職名なんですか?

桜井 社会起業家は、簡単に言えば、経済活動を通して世の中を良くしていく。例えば、これまで八百屋で売ってた野菜が農薬を使って土を傷めているものだったら、それをオーガニックなものに変えて流通する。まったく新しいことをはじめる人だけでなく、一照さんがよく言うところの「同じことなんだけど質が変わる」ということを各分野でする人たちも、主に社会起業家と呼ばれています。

一照 起業というくらいだから、それをビジネスとして成り立たせるというところが外さないポイントなわけですよね。
桜井 そうですね。そういう人たちのスタートアップ期というのは、例えば、ウェブサイトが必要ですとか、野菜作る人であれば売る人が必要ですとか、生態系があった方がうまくいくじゃないですか。

一照 生態系?

桜井 生態系。シリコンバレーみたいなものです。投資をする人がいて…

一照 ああ、それぞれの役割分担みたいなもの。

桜井 そうです。サスティナビリティーが高い社会を目指している人って、志は一緒。みんなが独立して集まって、そこで一緒に働く、みたいなことをやっている場所がImpact Hubっていう場所なんです。

一照 これって会社じゃないんですね?

桜井 会社じゃないです。京都の場合は、シドニーとアムステルダムのHubがシスターバブという役割になってくれて、一年間僕らに伴走してくれました。立ち上げるにはどういうことをやっていかなきゃいけないのか、コミュニティのバランスはどれくらいがいいのか、例えばアーティストを何割くらいいた方がいいのかとか。

一照 先輩たちが今までの蓄積をシェアしてくれるわけですか。それは素晴らしい。

桜井 そうです。各ハブが一票ずつ持つグローバルな全体会議みたいなことが年一回か二回あるんですが、全ハブが独立採算なので、Impact Hub Kyotoは設立準備は大丈夫なのかっていうことをプレゼンテーションして。

一照 Impact Hub Kyotoの人が?

桜井 はい。過半数超えしないとHubになれない、という仕組みがあって。まだまだコミュニティが脆弱だとか、多様性が少ないとか、ビジネス的にうまくいかないんじゃないとか。

一照 なるほど、そういうのをシビアに採点してくれるわけね。それはいいことだね。変に甘い夢持たせないで、ちゃんと指導してくれるっていうのは。

桜井 東京が日本で初めてで、京都が二番目で。

一照 Impact Hub Tokyoというのがあるんですか?

桜井 目黒にあります。そんなImpact Hub Kyotoの立ち上げ時のメンバーが、中野民夫さんだったり僕だったりしたんです。



2. クオリティーの違いに気づくー社会芸術とは?


一照 民夫さんはそういう分野にも関わっているんですね。ところで、桜井さんは、社会起業家でもないし社会変革者でもなくて、「社会芸術家」っていう新しいコンセプトで自分の仕事をまとめているわけですけど、具体的に今、社会芸術家としてどういうことをやっているかというのを、ネーミングの意味も含めて教えていただけますか。

桜井 僕の中で、(一照さんが主催している)仏教塾も社会芸術の一つなんです。

一照 あれをわざわざ「芸術」って呼ぶのがおもしろいですよね。

桜井 もう少しわかりやすく言うと、例えば今進めていることに、地域の方々と一緒に森を創ることがあります。そのアクションの中に、ただ樹を植林するのではなくて、たとえば何を植えるとこの土地に合っているのかを地域の人たちと一緒に考えます。それは、自然や土地を見る目を深くするというんですかね、土地に対する感受性を変える作業だと思うんです。たとえば、林業という一つのフィルターで森を見ちゃうと、植えるのは杉かヒノキ、松になりますけど、その土地にとって、私たちの未来にとって、何の樹が必要なのか、どういう森でなきゃいけないなどを考えてから植える。あとは、子供達と一緒にあちこち森を回って、どこが気持ちのよい景色だと思うか、とかを一緒に考えます。

一照 へ〜。そういうことも含めて考えていくわけだ。

桜井 そうすると、ふだん森を見ていた時と、子供達の感受性が変わる。そういう中で植林をしていくんですけど、森を健康的に保つっていうのはすごい大変なことです。そこでできたものとか、そのプロセスで生まれるもの、たとえば、森が抱いている田んぼがあれば、そこではお米が穫れるわけなんですね。人という動物と森が関わった以上は、そこも荒れさせるわけにはいかないし、森と畑の境界線も森側にはないわけです。

一照 手を入れていく、ケアしていくんですね。横への広がりも、未来への時間軸も入れていく。

桜井 たとえば、そこの田んぼで穫れたものでお酒を造る。お酒を造るってことは、モノが売れるようになるから森を保つお金や人の仕事になる。プラス、お酒を造るっていうことは、神事にも変われる。なので、子供達と一緒に、その森にある神社に行って、穫れたお米を毎年奉納しに行くんです。そうすると、今はイベントなんですけど、100年続いたらこれは多分祭になっていく、みたいな持続性を増すというようなことをしています。その時にできたお米などの商品は、実はそれは全部森につながっている。一照さんと仏教塾をやっていてすごく勉強になっていることは、同じ言葉でも質が、クオリティを変えることができる、ということ。それは何にでも適応できるなと思っていて。人が今の社会を形づくっている様々な価値観のクオリティを変えられる機会、クオリティに気づける機会、クオリティの違いを生み出せることに感受性が開く機会、こうした機会を作ることを、いろんな形ですることが、僕の中で「社会芸術」と呼んでいます。




3. 人間の初期設定で見えなくなっているモノ



一照 そういう活動も広い意味で芸術行為だっていう風に見ているわけですね。ふつう芸術っていうと、絵を描くとか作曲するとか演奏するとかというように、わりと枠が決まっているんだよね。その範囲で芸術ってことを考えているわけだけど、今の話しを聞くと、よく考えたらなるほどそれも芸術なんだねっていう風に、おなじ芸術っていう言葉が違った広がりを持って出てきているよね。

桜井 僕は高校出てからすぐにコンテンポラリーアートをやったんですね。そのあといろんな変遷を経て、常に芸術ではないけれども芸術的なもののそばにいました。たとえば、社会変革もそうかもしれないし、社会起業家もそうかもしれないし、民間企業の中のイノベーションなんかもそうかもしれないですけど。人が芸術的だなぁと思うことをつくることが得意だったし、それと関わるのが好きだったんです。そういうことをあらためて、「社会芸術」だったと言えるようになったのは、一照さんと出会ったからで・・・。

一照 え、そうなの?

桜井 はい。一照さんが「パラダイム・シフト」ということを僕に教えてくれた時もそうなんですけど、結局今まで価値観とか人間の初期設定で見えなくなっていたもの、凝り固まっているものに、どう気づいていくかってことと、そのことに気づいたらそれをズラせたりとか、もしくはそれを保留できたりとか…。

一照 さっきの、林業だったら木を植えることからちょっと外して見るっていう意味だね。林業の意味を変えちゃうみたいな。

桜井 「林」で「業」する必要があるのか、みたいなことですよね。そういうことが、感受性でいえば心のひだを広げるし、心を動かすことができる。心を動かすことができるものって僕はアートだと思うんです。

一照 そう言われてみると確かにアートだろうね。なるほど。

桜井 アートのもう一つは、既存の価値観をちゃんとズラすというか、柔らかくする機能があると思っていて、この二つのことができたんだったらそれはアートだよなって。一照さんから学ぶなかで言葉にできたっていうか。だから、禅は非常に芸術的な作業だと思っています。

一照 そうだね。新しく定義された芸術を当てはめれば、非常にそれをめざしているというか、それそのものだっていうのはありますよね、禅という一種の文化運動は。

 



——————————————————————
同じものでも多様にクオリティーを変えることができる、そうした感受性を開く機会を、幅広い方法で展開されている桜井さん。対談後編では、桜井さんが考える芸術について、さらに深くお聞きしていきます。

また、今回の対談のテーマの一つでもあった「人間の初期設定」をテーマに、桜井さんをゲストにお招きしたトークイベントを開催いたします。

「人生の初期設定~「わたしたちの生き方」の話をしよう~」
・開催日:2017年12月2日(日)18:30〜(受付18:00〜)
・開催場所:亀戸文化センター
・参加費:3,500円(U29/磨塼寺会員:2,500円)
・お申込み:
http://peatix.com/event/315059

——————————————————————
次の記事…【対談②】藤田一照×桜井肖典|前提条件を疑って、初期設定を保留する―術としてのアート
——————————————————————

桜井 肖典

一般社団法人リリース|http://release.world/


藤田 一照

公式サイト|http://fujitaissho.info

オンライン禅コミュニティ「磨塼寺」|https://masenji.com/


正会員になると
投稿にコメントすることや、禅コミュニティに参加することができます。
藤田一照への質問および
正会員向け坐禅会に参加することができます。